Ordyu
Seer
すっかり男装癖のついた真美那がわっと驚かせて障子を開けた。 男は二人いた。
寧温は船倉の中で必死に脱出方法を考える。船倉の片隅に水兵が土産物として買った紅型を見つけた。どれく らい経っただろうか。看守の水兵が静かになった船倉を覗きに来た。 「え、またですか」
「借地権を認めることはありません。ですが等価交換なら考慮いたします。テキサス州と交換ならどうでしょう ?」 「係長。さっきと言うことがちがうでしょう。シンナー中毒だから供述が曖昧でも——」
洋平はバレンチノの上下のジャージを着ていた。手にはビニール袋をさげ、中には食料品が見え る。 だが当時の殊に東京の読書人には、棟方志功の名前は知らなくても、かれの独得な画風と色彩感覚と書体には わりと接する機会があった。というのは、昭和十四年の十月から十七年末までのおよそ三年間にわたって、続け ざまに二十五冊も出た「新ぐろりあ叢書」の装幀を、すべて志功一人が担当していたからで、いまその一冊を手 にしてみると、裏彩色と表彩色を併用しているとおぼしい色彩感、それに意匠、ともに見紛うかたのない棟方調 で、隅に大きく「棟」という一字の款印が捺されており、したがってそれらの本が一団となって書店の店頭に置 かれていたときには、いまと違って本の出版点数が少なかった当時、共通した感覚の装幀によって「新ぐろりあ 叢書」の存在を、周囲に対して強烈に主張していたものとおもわれる。
「はい」 「金ならある! 利息を含めて払ってやろう」
「連れて逃げないと子どもとは今生《こんじょう》のお別れになるわよ。二度と母親に戻れないわ よ」 裕輔の心臓が高鳴った。「おじさん」かけた声が少しうわずった。